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サムライソード 【さむらいそーど】 ジャンル アドベンチャー 対応機種 ファミリーコンピュータ ディスクシステム 発売・開発元 カプコン 発売日()は書換開始日 1988年11月15日(1988年12月23日) プレイ人数 1人 定価 3,300円 判定 良作 ポイント RPGのような世界観のファンタジー系アドベンチャーカプコンとしては非常に珍しいテキストアドベンチャーバトル仕立てでムダのない展開のストーリー 概要 ストーリー 特徴 評価点 問題点 総評 余談 概要 1988年カプコンによって発売されたテキストアドベンチャー。カプコンのディスクソフト第3弾でもある(*1)。 アドベンチャーなのでコマンド選択型だが、推理系ではなく当時のRPGの花形であるファンタジー系なストーリーになっている。 また、単なるファンタジーにとどまらず機械科学の一面もあり、このような科学と魔法の複合した世界観はゲームでは珍しいものだった。 当時の『魔界村』『ロックマン』をはじめ現在でもアクションゲームメーカーが色濃く、その後もRPG全盛期が続いた中でRPGにほとんど手を出さず『ストリートファイターシリーズ』のように、アクションゲーム主体のスタイルを貫いて人気を築き上げたカプコンとしては異色の作品と言えるだろう。 ストーリー 遠い昔か、はるか未来かもさだかではない時代、巨大な力で世界を闇に包もうと企む暗黒の司祭ソロンが世界を恐怖に陥れた。 闇の力に対抗した光の魔法使いたちも次々に敗れ、今やわずかに生き残る者のみという絶望な中で、ソロンに戦いを挑む一人の若者(主人公)が立ち上がった。 だが、ソロンの圧倒的な闇の力に敵うはずもなく、一方的にやられるばかりで死は目前であった。 そんな中で、謎の声を聞くこととなる。その声の主の力によりソロンの魔手から逃れられた若者は、見知らぬ森の中で目を覚ますことになる。 その声に導かれるように、やがて光の魔法使いの少女サリアと出会い、伝説の剣サムライソードのことを知ることになる。 そして再びソロンと戦うべく彼の旅が始まった。 特徴 コマンド選択型アドベンチャーだが、このジャンルに多い推理ものではなく、RPGで使われるようなコマンドが併用されている。 具体的には「移動」「見る」「調べる」「話す」「渡す」「使う」だけでなく「戦う」「逃げる」なども含まれる。 他に本作独特なものとして「サリア」というものがあり、彼女が同行している時に実行し、彼女が得意とする魔法などを使わせたりできる。 魔法の種類。キアーラ(発光)スウロリ(鈍化)ライトボルト(稲妻)スライパ(催眠)ウインダ(風)リライ(目覚め) 判断を間違えるとバッドエンドとなる。 冒険の最中で幾たびとなく現れるモンスターとの戦いがある。 特にこのバトルにバッドエンドのポイントが多い。 ストーリーに関しては完全に一本道のストーリーである。 とはいえ、後述の通り非常に見ごたえのあるストーリーでBGM、グラフィックとも秀逸なのでそこが見どころではある。 また上記の通り、1つ判断を間違えるとバッドエンドの危険を孕んでいるスリリングな展開が繰り返される。 評価点 ストーリーそのものはかなり短めになっているが急展開の繰り返し。 ストーリー自体は全4章構成だが急展開が続き、このようなアドベンチャーにありがちなダラダラするポイントがあまりない。 また、時折発生するバトルも、やみくもに戦うだけではなくアドベンチャーとして細かい判断が要求されるのもRPGとは違った面白さ。 各章の舞台も変化に富んでいる。 コマンド自体もそこまで多くないので迷った時の総当りでも、そこまで煩わしさを感じにくい。また、メッセージ早送りも可能。 このようなコマンド型アドベンチャーでありがちなコマンドを不要に繰り返してしまった場合などに、早送りすることができるのでムダなコマンドを実行してしまった場合のイライラを緩和できる。 そもそもメッセージ自体も比較的速い。 キャラクターの性格がそれぞれ短い中でも細かく表現されている。 主人公は元々ソロンを倒すことを目指していたこともあり、気持ちのブレを感じさせない頑強な意思を感じられる。 光の魔法使いでありながら、根は純粋な年ごろの少女のような気まぐれなサリア。 グラフィックウィンドウのアクションも多く、演出も割と細かい。 このようなゲームではテキスト主体になりがちで、最低限の動きしか見せないのが多いが本作では細かいことでもグラフィックの変化が多い。 BGMも雰囲気にマッチしており、曲数も多く、場面場面で適したものが細かく割り振られている。 ディスクシステムということもあり拡張音源を巧みに生かしている。 使い回しているのはバトル時のBGMぐらいなので、作り込みが感じられる。 秀逸なグラフィック。 主人公やサリアの顔グラフィックが秀逸。 コマンドウィンドウ下に出るのだが、どちらも劇画調で非常に本格的。 グラフィックウインドウでのモンスターもその迫力は充分に感じられる。 問題点 バッドエンドに絡む部分でもノーヒントな部分が多い。 評価点と一部被るがバッドエンドの大部分はバトルに集約されており、今が戦うべき時なのかを判断しなければならず、それに関してはノーヒント。 戦闘以外でノーヒントのバッドエンドは最終章のみだが、ここでも1つの選択ミスや判断の遅れがバッドエンドに繋がることが多い。 しかも、再開ポイントが章のはじめかセーブしたポイントのみ。そのため最終章は多少なりとも保険的にセーブをしておかないと戻りが大きくなり同じポイントを何度もやり直すハメになる。 またサリア呪文の効果に関しても、使ってみなければ効果がわからない。 「見る」と「調べる」が線引きが曖昧。 実際には「見る」は目に見た状況を伝え、「調べる」は気配などを感じたり手に取ったりするというニュアンスだが、このようなアドベンチャーの王道である推理系では同等に見られがちなので紛らわしい部分ではある。 総評 ストーリーはディスクカードの容量のせいもあって短めだが非常に見せ場が多く、RPGのような世界観の物語をアドベンチャーで体感できるのは非常に斬新なモノであった。 今では珍しくないが、剣や魔法で戦うファンタジーにSFの要素が融合し、当時としては非常に真新しい世界観を作り出しており、そういう意味での世界観の新鮮さも評価できる点ではある。 また常にバッドエンドの危険を孕んだバトル1つ取ってもその局面局面で同じ手が通用しないスリリングな展開が作り出されており、ストーリーの短さをゲーム的な要素で補えている。 RPGの世界観を物語化したファンタジー小説や漫画などが好きな人などは特に必見の1作と言えるだろう。 余談 音楽を担当したのは後に『ストリートファイターII』等を手掛ける下村陽子氏。本作がゲームソフトにおける彼女のデビュー作である。 なお、ゲームソフト以外ではメダルゲーム『ハイスクールカンちゃん』のBGMがカプコンでの初仕事となっている。 いきなり敵になすすべなく殺されて始まる展開は1ヶ月後に発売された『ファイナルファンタジーII』が有名だが、本作はそれよりも先んじている(ザコかラスボスかの違いはあるが)。 にもかかわらず、それが語られることはほとんどない。メーカーもカプコンという一流メーカーだというのに不憫な話である。 本作はカプコンのディスクカードとしては最終作となった。 結果的にカプコンのディスクソフトはわずか3本に終わった。 カプコンは元々ディスクシステムは保険的な位置付けとしてカセットリリースを本道としていたことや、翌年にはディスクシステムの衰退が一層顕著化したこともあって撤退したのも無理もない話。
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邂逅 ◆HoYWWMFJdI 香椎愛莉の命が失われ、無言で歩く一行。 未だ目を覚まさない永沢を背負い、美遊とは逆の方角へとアベルの手を引いて行く。 「…………タケシは、ここに連れてこられる前は、どんなことをしていたの?」 ようやく落ち着いてきたのか、アベルが歩きながらジャイアンに問いかける。 「ん?ああそうか、お前の話だけを聞いたんだったな。 そうだな……。 俺達の世界は、魔術師とか魔法なんてのはなくてな。 小学校っていう……勉強したり運動したり、大勢の仲間と一緒に生活する場所にいたんだ」 「へ~、たくさんの仲間が一緒なんて、なんだか楽しそうだね」 「ああ。そこでスネ夫やのび太達と毎日遊んだりしてな。 学校が終わった後も、野球をしたりして遊ぶんだよ」 「ヤキュウ?アイリが言っていたバスケみたいなものかな」 「……そうか、あの子はバスケが好きだったのか」 落ちそうになった永沢を背負い直し。 「そうだな。野球ってのは手を握ったくらいの大きさの球を投げて、 バットっていう棒で打つ遊びだ。 投げる奴と打つ奴だけじゃなく、打った球を取るために守る奴もいてな。一人じゃできない。 たくさんの仲間がいないと、できない遊びなんだよ」 「ふふ、面白そう。僕にも教えてくれる……?」 無理やり笑顔を作るアベルを見て、握った手を離してくしゃくしゃと頭を撫でる。 「わっ、わっ」 「はっはっは、もちろんだ。 あんな重そうな剣を振れるんだ、きっとアベルは強打者になれるぞ。 ただ、このジャイアン様の特訓は厳しいぞ。 スネ夫やのび太も誘ってみんなでやろう」 「うん!ありがとう、タケシ」 二人で自然、笑顔でいると。 突然、ジャイアンの頭に嵌められていた風の子バンドが頭上へ飛ぶように外れ。 ―――そのまま頭上で待ち構えていた右手が、バンドを掴みそのまま元の頭の位置へと嵌める。 「な、な!てめえ起きてやがったのか!!」 「あーあ。せっかくのチャンスだったのに、君は甘いねえ」 風の子バンドのことか、それとも気絶している間に自分の対処をしなかったことか。 背中の永沢が救いようがない、とばかりに溜息をついて首を振る。 「この野郎!!!」 「あー『寒い』『寒い』吹きっ晒しで眠っていたから『寒く』てかなわないや」 「いでででででで!!!」 「タ、タケシ!?」 タマネギ頭の少年は、背中からぴょんと飛び下り、のたうち回るジャイアンを見下ろす。 心配そうにジャイアンをさするアベル。 「くそ……覚えてやがれ……」 「さあ?もう忘れたよ。 で、どこへ向かっているんだい」 「もう。喧嘩はよくないよ……。 とりあえずハートランドってところに向かってるよ」 「ふーん……」 永沢はスマホを取りだし、現在地を確認する。 (そういえば、スタジアムからハートランドの間にも×印はあったな……) 「くそ……」 ジャイアンが立ち上がり、再び文句を言おうと口を開いた時。 ―――ソレは突然、大地を揺らしてやってきた。 ■■■ 「あーー!あれ!凌牙あれ!」 ナッシングに引っ張られ、湾岸に向かっていた神代凌牙とリュカ。 そのナッシングが、既に遠くに見える船影を指差して悔しがる。 「追いかけて凌牙」 「無茶を言うな」 凌牙は溜息をつく。 「ほらほら、この子使ってよこの子」 いつの間に抜き取ったのか、『ビッグ・ジョーズ』のカードを突きつけるナッシング。 「なっ、てめえそれは!」 「大事にしてくれるのは嬉しいけど、もっと使って欲しいって言ってるわよ」 「フン、大きなお世話だ」 親の形見でもあるカードをナッシングから引っ手繰る。 ぷくーっとナッシングが頬をふくらます。 「とりあえず北に向かったのが分かっただけでも収穫だろ。 ……次は、あの化け物退治の番だ」 「あ。ありがとう」 リュカがびっくりした顔をして、慌ててお礼を言う。 「フン。さっきも言っただろ。あのブタ野郎へ反撃するためさ。 別にお前のためなんかじゃねえ」 「テンプレなツンデレね」 「馬鹿言ってねえでさっさと幼稚園に向かうぞ」 リュカとナッシングを従え南東へと向きを変え。 「あ、あれ……!!」 リュカの指差す方向。 ―――三人の少年達が、巨大な怪物と対峙している。 「チッ、移動しちまってたのか!いくぞ!」 「うん!」 ■■■ 「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」 その咆哮で辺りの家々が震え。 ―――巨大な牙を、エクスカリバー・ガラティーンが受け止める。 が、少年の小さな体では踏ん張りきれず、そのまま場外……ではなく遠方へと吹き飛ばされる。 「うわっ……!!」 アベルは吹き飛ばされた先でごろごろと転がって受け身を取る。 「アベル!!くそ、なんだこの化け物は!」 ジャイアンは熱線銃を取ろうと腰に手をまわし、丸腰であったと気がつく。 「おい永沢!非常事態だ!銃を貸せ!! ―――ってどこ行ったアイツ!!」 振り返ると、傍に居たはずの永沢の姿がそこにない。 更に後方、永沢はアベルが吹き飛ばされた辺りの家の郵便受けを、何故かごそごそと漁っている。 「おい永沢!何やってんだ!銃を早く投げろ!!うわ!!」 鋭い牙の口を開け、食べようとしたところを横に飛んでやりすごす。 叫ぶジャイアンを尻目に、永沢はぶつぶつと呟く。 「……フン、聞こえているさ。そんなもの使わなくったって……えい」 印のあった場所、郵便受けの中に隠されたボタンを押す。 ―――すると。ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴと地鳴りが聞こえ。 化け物とジャイアンの周りの地面一帯が大きく陥没を起こし始める。 「うわああああ!?な、なんだ!?」 「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」 ガン!ガン!とアスファルト同士がぶつかり。 地面から水が噴き出し、付近の家も飲み込まれ。 ジャイアンときゅうきょくキマイラが崩落に巻き込まれていく。 「ふうん、巨大な落とし穴ってわけか。 ……ありがとう剛田くん。君の死は無駄にしないよ」 陥没の淵を覗き込み。 フフフ、と笑いながら勝ち誇る永沢。 ―――が。 「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」 怪物は変わらぬ咆哮を叫び。 地面に巨体を一度沈み込ませた後、大きく跳躍してくる。 瓦礫を辺りに撒き散らしながら、大きく空中を跳ぶ。 そしてドスン!と、永沢の前へと、地面を震わせ着地する。 「な、な、な、な……」 怪物の尋常ならざる存在感を前に。 ガクン、と腰を抜かして尻もちをつく永沢。 「お、おい。カード、なんとかしろよ、おい。ラッキーなんだろ」 ラッキーへと呼びかけるが何も返事はなく。 「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」 怪物が飲み込むために巨大な口を開け。 「ナガサワ!!逃げて!!!」 アベルが体当たりで永沢を弾き飛ばし。 代わってそこにいたアベルを、パクリ、と飲み込んだ。 「あ……ああ……」 「クソッ……!!いったいどうなって……アベル!!!」 びしょ濡れになって、陥没した地面をよじ登ってきたジャイアンも、その光景を目にする。 ■■■ 「あそこだ!!リュカ、アイツの弱点ってのはなんなんだ!!」 走りながらキマイラへと近づく凌牙とリュカ。 「背中にボタンがあって、それ押せば停止するはずなんだ。僕ならその位置も分かる」 「よし、分かったぜ。それなら……!!」 凌牙はデュエルディスクを展開し、カードを置く。 「俺は、ビッグ・ジョーズを召喚!!」 すると、掛け声と共に巨大な鮫が凌牙の前に現れる。 「わ。すごい!」 「よしリュカ、こいつに乗れ!あの化け物の背中まで連れて行ってやる!」 「う、うん!わかった!」 ふわふわ付いてきたナッシングも凌牙の隣に追いつく。 鮫の背中にリュカが跨り。 「よし、いいぞ。続けてマジックカード、アクア・ジェットを発動!!」 再びカードを置くと、ビッグ・ジョーズの体に、機械の翼とジェット噴射装置が取り付けられる。 「ふーん。つまり、マジックコンボってワケかしらね」 「やかましい。準備はいいか、リュカ!」 「うん、大丈夫!!」 「よし、行け!ビッグ・ジョーズ!!」 リュカはしっかりと鮫の背に掴まり。 ひと声吠えると、ジョーズはリュカを乗せて、きゅうきょくキマイラの方向へと飛んでいく。 ――『ぴーんぽーんぱーんぽーん』 その最中、辺りに設置されたスピーカーから大音量で放送が流れ出す。 ――『六時になりました。みんな大好きポーキーさまのありがたい放送のじかんです』 「チッ、こんな時に!」 ■■■ リュカは放送に意識を傾けず集中し、ジョーズに掴まってキマイラへと接近する。 それに気がついたジャイアンは腰を抜かした永沢から熱線銃を奪い、 キマイラの注意を自分に向けさせようとする。 「……くそっ!!この化け物野郎!アベルの仇だ、喰らえ!!」 強力な熱線をキマイラへと発射する。 「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」 咆哮を上げ、熱線を弾き。キマイラには傷一つつかない。 「な……全然効いてないだと!?なんなんだコイツ!!」 熱線が向かってきている鮫へ逸れないよう、注意して正面に撃っては、横へと逃げる。 ――『鹿目まどか』 その間も放送が流れ続けて、死者の発表が始まっている。 ジョーズはキマイラの上へと到着し。 リュカが飛び降り、キマイラの背後へと着地する。 ビッグ・ジョーズはそのまま正面に回り、体当たりでキマイラの動きを止める。 「誰だか分からねえけど助かる!!」 ジャイアンは熱線銃で援護しようと構え。 ――『骨川スネ夫』 「なっ!?スネ夫!?」 ジャイアンが驚きの余り硬直し。 そこへジョーズごと飲み込もうと、大口を開けた怪物が。 ……口を開いたまま、動きを止めた。 役目を果たしたビッグ・ジョーズは姿を消し。 ―――『野比のび太』 十三人目の死者が呼ばれた頃。 「ふう……大丈夫?」 キマイラから降りたリュカは、二人の少年に近づく。 「……フン。僕は、助けてくれなんて言った覚えはないんだ。 それをアイツ……。 でもそうさ、向こうは二度助けて、僕は何も払ってない。 大人の取引なら大儲けってやつさ。これで良かったんだ……」 玉葱頭の少年は何かをぶつぶつ言い。 「アベル……スネ夫、のび太……!! うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」 大柄な少年は、顔を憤怒の色に染め。 停止したキマイラに対し、力いっぱい殴りつける。 「くそっ!!くそっ!!くそっ!!! なんでだ!! なんでこんなことをするんだ!!! くそっ!!くそっ!!くそっ!! 許さねえ!!ポーキーの野郎、絶対に許さねえ!!」 右手が赤くなるくらい殴り続け。 リュカは悲しそうに、ジャイアンと、キマイラとを見ている。 ―――そこへナッシングが近づいてきて。 キマイラを、傍にいたひよこごと黒い球体に包み、そのまま無へと消滅させる。 再度殴ろうとしたジャイアンの拳は空を切り、そのまま地面に倒れ伏す。 「うぅ……クソ……クソ!!」 地面を叩いて涙を流し始める。 「あ……」 「大丈夫よ。あの子、『無』から生まれたんでしょう?『無』に帰してあげただけよ」 「そっか……ありがとう」 「別にあなたの……ってこれじゃ凌牙よね」 ナッシングは後ろを振り向いて凌牙を指差し。 「その凌牙がなんか茫然としてるのよ。何とかしてきて」 「凌牙が?」 ナッシングに頷き。 リュカが走って凌牙に近づくと、放心したように呟いていた。 「……遊馬が、死んだ……だと……?」 そして永沢少年は、ひとりごちる。 「……やっぱり生きてたね。卑怯者な藤木くん。 それにしても。 二十四人で輪になるか、十二人殺せ、だって……?」 【D-2/市街地/一日目 朝】 【神代凌牙@遊戯王ZEXAL】 [状態]:健康 [装備]:デッキ(神代凌牙)@遊戯王ZEXAL、デュエルディスク@遊戯王ZEXAL [道具]:基本支給品一式 [思考・行動] 基本方針:殺し合いをぶっ潰す 1:遊馬が死んだ……だと……? 2:リュカは信用できそうだ。 3:悪人(?)の木之本桜を探しに北へ向かう? 4:璃緒を探す。 5:ベクターを見かけたら、ぶちのめす。 6:ナッシングの力を警戒。 ※参戦時期は、真月零がベクターだと判明してからナッシュの記憶を思い出すまでです。 ※使用済カード:ビッグ・ジョーズ×1、アクア・ジェット×1 【『無』@カードキャプターさくら(アニメ)】 [状態]:魔力消費(中) [装備]:無し [道具]:無し [思考・行動] 基本方針:お友達(さくらカード)を返してもらう 1:北に行って木之本桜を探したい。 2:お友達を探すのを邪魔するものは消す。 【リュカ@MOTHER3】 [状態]:PP消費(中)、疲労(小) [装備]:無し [道具]:基本支給品一式、不明支給品0~2 [思考・行動] 基本方針:殺し合いには乗りたくない 1:凌牙と同行する。 2:凌牙が心配。 3:要未来を探す。 4:クラウス兄ちゃん……。 5:あの二人(永沢、ジャイアン)が気になる。 ※クラウスが仮面の少年であることに気づきました。 【永沢君男@ちびまる子ちゃん】 [状態]:上半身に大きな切り傷、偽ナンバーズの影響下(強運) [装備]:No.7 ラッキーストライプ(偽)、賢者のローブ(ボロボロ) [道具]:基本支給品、パネル地図、ランダム支給品×1 [思考・行動] 基本方針:殺しに乗りつつ生き残る 1:放送の内容を整理したい。二十四人で輪になる……? 2:アイツら(凌牙、リュカ、ナッシング)は利用できそうか見極める。 3:他のマーダーと手を組むか、対主催に紛れ込んでキルスコアを狙う。 4:ジャイアンを利用してから不要になったら処分する。 5:助けてくれたアベルに対する複雑な感情。 6:やっぱり生きてたね。卑怯者な藤木くん。 ※偽ナンバーズの影響を受け、少し大胆になっています。 ※ジャイアンからのドラえもんや秘密道具に関する情報を得ました ※時代的に漫画ドラえもんは存在しますが、メタ知識は制限されています 【剛田武@ドラえもん】 [状態]:健康、疲労(大)、頭部に軽い打撲、全身に打ち身、ずぶ濡れ [装備]:熱線銃、風の子バンド [道具]:基本支給品 [思考・行動] 基本方針:殺し合いを阻止して、ポーキーをぶん殴る 1:ポーキーに対する憤怒。 2:スネ夫、のび太を失ったことに対する悲しみ。 3:アベルを守れなかった悔悟。 4:リュカ・凌牙に対する感謝。 5:永沢をぎゃふんと言わせ、ナンバーズを奪い取る。 ■■■ ―――闇が消え、木漏れ日が辺りを照らし始める。 数刻前の騒乱が嘘のように、森に相応しい静寂が訪れている。 どすん。 再び静寂を破ったモノは、上体を起こし頭を振る。 「いたた……。ってあれ、生きてる……?」 手を握って開いてみる。どちらの手も大丈夫。 (僕は怪物の口にぱくん、と食べられて。それで……?) 見上げると、ちょうど頭の上辺りに小さな窓。 どうやらあそこから落ちてきたらしい。 立ち上がって覗こうとしたら、窓は消えてしまった。 「どうなってるんだろう……?」 剥き出しだったガラティーンを鞘へと納め。 どうも食べられた後、あの窓からここに来たみたいだ、と推測する。 そして隣の木をふと見ると。 「ん……?あっ大変!怪我してる!!」 背中を木に預けて眠っている女の子がいる。 肩から血を流し、服もぼろぼろだ。 だけど近づこうとしたら。 その子は急に跳ね起き、ナイフを抜いて僕を警戒している。 「大丈夫、キミを傷つけたりしないよ。それよりキミの傷、早く治さないと」 だけれど、女の子は警戒をやめようとしない。 (怪我をして警戒するのは、仕方ない、よね) 両手をあげて害意がないことを伝えてみる。 ―――が、その子と向き合うと。 不吉な、禍々しい気が襲ってくる。 そう。 ちょうど魔術師ゲマと対峙した時のような。 『死』そのものを感じるような。 圧倒してくる気を感じる。 (でも……) ゲマとは全く違う、見捨ててはおけないもの。 もっと純粋な何かを、目の前の少女から感じる。 ■■■ (わたしたちが気がつかなかった……?) いくら眠っていてもアサシンのクラスである以上、 もっと遠くから接近してきた時点で分かったはずだ。 そして彼女はスキル『気配遮断A+』を持っている。 いくら霊体状態になれないとは言え、 例えば目の前にいきなり現れでもしない限り、 彼女が『そこ』にいることに気が付かず、通り過ぎるはずであった。 (むー。これもあのイリヤと金髪の子にまけたせいだ) イリヤに背後を取られ、金髪の子の魔力砲の直撃を受けた悔しさを思い出す。 (どうせまたこの子も『光』ばっかりでおいしくないだろうけど……。 おなかもすいてるし、さっさと食べちゃおう) 黒のアサシンは解体聖母を構え、『暗黒霧都』を発動しようとする。 そしてそれに呼応するように、 少年の『転輪する勝利の剣』の柄――疑似太陽が内蔵されている――が光り始める。 「むっ、また……!?」 「わわっ?」 少年も驚いたらしく、鞘ごと地面に置き、更に害意がないように伝えようとしている。 「……ばかな子」 自分を説得しようとした、桃色の髪の子供を思い出し、首を振ると。 一瞬で少年の目の前へと移動し、左肩にナイフを突き立てる。 「くっ……!大丈夫。怖くない、怖くないよ」 刺された肩をそのままに。 警戒する獣を安心させるかのように。 ぽんぽん、と近づいたアサシンの頭を撫で。 「かの少女を癒したまえ―――ベホイミ」 「なっ、なにを」 少年は安心させるようにぎゅっと抱きしめると、回復魔法を彼女へと行使する。 ―――すると、ゆっくりとアサシンの肩の傷が塞がっていく。 「………………あったかい」 魔術の効果なのか分からないが。 アサシンには、その回復魔術が。とても暖かく感じた。 「うん。これで少し違うと思うけど……どうかな?」 抱きしめていた腕を離し。 心配そうにこちらを見つめてくる。 銀髪の少女のアイスブルーの瞳と、 紫のターバンを巻いた少年の黒色の瞳とが重なる。 「………………やさしい目。ふしぎ」 ―――黒のアサシン、ジャック・ザ・リッパー。 彼女は、堕ろされた胎児たちの集合体として産まれた、悪霊のような存在。 ヒトの身ではなく、『魔』そのものに近い存在である。 悪意に対しては残酷に応じ、好意に対しては純粋な存在であるが故に脆い。 そして、アベル。 彼自身も知らぬことだが。 彼には忘れ去られた民、エルヘブンの『ヒトと魔を繋ぐ者』としての力を色濃く受け継いでいる。 獰猛な魔獣であるキラーパンサーの子供とも、既に友誼をかわしている。 彼には魔物どころか、人族と敵対する魔族とすら、心を通わせる素質を持っている。 「えと……。僕はアベルだよ。キミは?」 目を互いに背けぬまま、自然に言葉が口に出た。 「…………わたしたちに、なまえはないの。アサシンとか、ジャックとかよばれてるけど」 「そっか、名前がないんだ。じゃあ、えっとね……」 アベルは少しの間、眉毛を寄せて真剣に考えて。 「んと、じゃあ。ジル、って名前はどうかな。ジャックだとちょっと男の子みたいだし」 「…………ジル」 「うん。いや?」 ジル・ザ・リッパー。 連続殺人事件の犯人が、男か女か分からぬためにそう呼ばれたことも多々ある。 恐怖と忌避とを込められた名前。 だが、それとは違う暖かさを感じる。 ―――自分のために、考えてくれた名前。 ふるふるとアサシンは首を振る。 「ふふ、よかった。 前ね、プックルっていう友達に、最初ゲレゲレって名前をつけようとしたら、 ぶんぶんぶんぶん首振られて断られちゃったから。 っていたたた」 顔をしかめ、左肩を押さえるアベル。 「アベル、すわって」 「うん?」 言われた通りにアベルが座ると。 アサシンがぺろぺろと、アベルの肩の血を舐めはじめる。 「わわ。ふふ、ジル、くすぐったいよ」 「いま、なおすから」 アサシンはスキル『外科手術』を使い、黒い糸で乱雑に傷口を縫っていく。 黒い糸の跡はミミズがのたうつような、お世辞にも綺麗とは言えないが、 見た目以上にしっかりと傷を縫合していく。 「……どう?」 「あ、うん」 ぐるぐると左腕をまわしてみる。 「うん、痛くないや。ありがとうジル」 「……ん」 するとアベルに向かって頭を突き出す。 「……うん?」 「ん」 「あ、ああ!……ふふ、ありがとうジル」 なでなでとアサシンの頭を撫でる。 すると、ころり、と転がりアベルの膝を枕にする。 「ふふ、なんだかプックルと同じで猫みたいだ」 「…………おかーさんでもないのに。ふしぎ…………」 アサシンはすやすやと安心したように眠りはじめる。 「……ふぅ。この子、疲れてたのかな。 ―――今度こそちゃんと、守らないと。 見ていて、アイリ……」 亡くしてしまった尊い命に、誓う。 その香椎愛莉の友人、三沢真帆を殺した相手が。 真帆を含め、既にこの地で5つもの命を奪った者が、自身の膝で寝ていることも知らず。 穏やかな寝顔の少女を、少年は優しく撫でる――― 【F-2/湖北端近くの森/一日目 朝】 【アベル(主人公・幼年時代)@ドラゴンクエストⅤ 天空の花嫁】 [状態]:健康、左肩治療痕、MP消費(大) [装備]:転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)@Fate/EXTRA CCC [道具]:基本支給品一式、魔法の聖水@ドラゴンクエストⅤ 天空の花嫁、ランダム支給品0~2 [思考・行動] 基本方針:この島から抜け出して母を探す。どんな状況でも父の誇りを汚したりしない。 1:この島の脱出方法の調査。 2:ジル(黒のアサシン)を守る。 3:タケシ(ジャイアン)達は無事だろうか。 4:アイリの友達を見つけたら、アイリのことを謝りたい。 5:美遊、君は… ※パパス死亡後、ゲマによる教団の奴隷化直後からの参戦です。 ※参加者は皆奴隷として連れてこられたのだと思っています。 ※ビアンカについて既に知己ですが、参加自体をまだ把握していません。 【黒のアサシン@Fate/Apocrypha】 [状態]:ダメージ(中)、疲労(大)、魔力消耗(大)、右肩治療済、睡眠中 [装備]:解体聖母×4@Fate/Apocrypha、呉キリカのかぎ爪×5@魔法少女まどか☆マギカシリーズ みかわしの服(カスタム)@ドラゴンクエストⅤ 天空の花嫁、決闘盤(ミザエル)@遊戯王ZEXAL [道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品0~2、三沢真帆のランドセルの中身(基本支給品一式、ランダム支給品1~3) [思考・行動] 基本方針:アベル以外を殺しておかーさんのところに帰る 1:睡眠中。 2:アベル。ふしぎ。あたたかい。 3:アベルとの安らぎを壊すモノは殺す。 4:何か(人間の魂)を食べて魔力を回復させる。 5:イリヤと金髪の子(ヴィヴィオ)は必ず自分の手で殺す。 6:頑張って街に行ってみようかな。 7:光は、やっぱり嫌い。 8:たまには脂の乗った魂(悪人)も食べたい。豚(ポーキー)は死ね。 ※解体聖母について 本ロワでは条件が揃っていても即死は不可能であり、最大効果で内臓ダメージ(大)を与えるものとします。 また、使用には大きく魔力を消耗し、消耗ゼロから使用しても回復無しで使用可能な回数は4回が限度であるとします。 ※“CNo.107 超銀河眼の時空竜”の存在を確認、ミザエルのデッキのカードの効果を大まかに把握しました。 ※使用済カード:半月竜ラディウス×1、防覇龍ヘリオスフィア×1
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突貫で作ったから内容は悪いよ、しばらく待ってね ウォールマート 仕様 ゾンビが無限湧き 一番右の奥に行くとゴールドが貰える 時間経過でゾンビの種類とレベルが増える 一定時間経過後ゾンビラッシュ到来(以後無限湧き) 一定時間経過後強制的にバスが破壊され終了する ポイント稼ぎ方 ランキング上位を目指す場合アイテムとチケットを大量に使います。 個人目標を達成するだけなら1プレイだけで達成可能です。 上位の編成 TMF ポリス メカニック 他にもあるけどようわからん お勧めはメカニックの編成 またサポートアイテムの「ジェネレーター」「砲塔」は必須です。 TMF TMFⅲの効果を頼りに、準備時間を短縮するアイテムを使いまくってユニットの出撃コストを0にし耐久する戦法。 メリット -コストが0になれば大量に展開できる -数で圧倒しやすい デメリット -コストが減るかは完全運頼り -安定はしない -再出撃時間が長い ポリス(待たれよ) メカニック ウェルダー、メカニック、ヒルビリー(レッドネック)、ジェネレーター、砲塔、自由枠。の編成 メカニックⅲの効果を中心に耐久する編成。 とにかく砲塔を大量に展開して耐久する戦法、これも運頼りなため安定性には不安があるが、乗れば間違いなく強い。 初動にレイジポイントを溜める ジェネレーターを設置し、次に砲塔を設置する、設置の場合バスの近くに設置する。 砲塔かジェネレーターの体力が一段回減少したらウェルダーを出す、修理している間にヒルビリー、メカニックをとにかく出しまくる、再出撃までの時間を短縮するためエナジードリンクをとにかく使い、砲塔をだす。 ウェルダーかメカニックが死亡したら一度出撃を止める。 再度ウェルダーが出撃可能になれば、同じことを繰り返す。 安定してきたらアイテムの使用をやめる。 私の稼ぎは1200ぐらいだった。 深夜の突貫工事、後日内容修正します
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亡き者に贈る鎮魂歌 ◆SERENA/7ps 回答は言葉ではなく行動だった。 カエルはバイアネットをかかげ、マリアベルに斬りかかる。 マリアベルはそれを避け、レッドパワーを繰り出すために精神を集中させた。 「当たり前だ……」 カエルの表情が険しく、目の前の敵を倒すためのものに切り替わる。 そして、マリアベルの精神に激しく揺さぶりをかける。 「シュウは俺が殺した……」 「何じゃとッ!?」 あと少しでレッドパワーを繰り出すことができたのに、マリアベルはカエルの言葉に心を乱し、集中力を欠く。 気がつけば魔力も霧散しかけていて、ここからの再構成はもはや無理に近い。 その隙を逃すことなく、カエルは強靭な脚の力を活かしてマリアベルの方に飛んでいく。 カエルの言葉はもちろん嘘だ。 シュウは予想外に強敵で、勝負がつくことはなかったが、マリアベルとシュウが別行動をしているのはカエル自身がよく知っている。 だから、シュウは死んだと言って、マリアベルを動揺させる。 言葉だけでは信用しがたくても、カエルの戦闘を経験したと思われる服装の乱れと、覚悟のしるしとして己につけた傷が、カエルの言葉に現実味を持たせる。 そして、シュウがどこにいたかも語ることで、マリアベルにとってシュウの死が確定したものに摩り替わっていく。 「あやつが、死んだじゃとッ!」 動揺でマリアベルの体が思うように動かない。 信じられないという気持ちと、有り得ないという気持ちが交錯して、カエルの攻撃を避けきれない。 足を鈍らせていた代償は、マリアベルの右腕を深く貫くバイアネットだった。 カエルは着ぐるみごしに肉の感触を感じ取り、さらなる攻撃を繰り出さんとする。 一方、マリアベルもこのまま死ぬわけにもいかない。 痛みを堪えカエルに背中を見せ、汚く狭い路地裏へと駆けていく。 それはマリアベルがカエルに適わないと見て、逃亡を図ったからではない。 ロザリーとニノをカエルから少しでも引き離すためと、『もう一つ』理由があるからだ。 街灯も当たらない、日光を浴びるほどの時間でもまだない。 薄暗い空間を慌しい足音でかける二人。 着ぐるみを着た、傍から見れば正体不明の存在マリアベルと、騎士服を着たカエルの奇妙な追いかけっこ。 マリアベルは巧妙に逃げ、何度も曲がり角を曲がり、カエルに易々と追撃を許すことはない。 バイアネットの特性を知っているがために、多少距離が離れたところで意味などないことも知っているからだ。 (シュウが死んだ……) 地面を駆けずり回りながら、シュウのことを考える。 シュウが今そばにいないこと、ハーレーのいる場所にいたことを当てたカエルの言葉に疑う余地はなくて。 ……本当は、シュウの使っていた武器を回収しない理由もない。 そのため、本当に殺したのなら、シュウの使っていた刀や武器を見せろと言われれば、カエルの方が論破されていたのだが。 マリアベルもそこまで考えが回らない。 下手に思索に耽れば、今度は右腕以外の場所を傷つけられるかもしれない。 着ぐるみを着ているため、その傷に直接手を触れることはできないが、動かすことは難しい。 右腕はもう使えないと見ていいだろう。 さらに、出血も早期に止めないと、破傷風や出血多量などの二次的な被害も出る。 何より、マリアベルはまだ二人の命を預かっているのだ。 ここで死ぬわけにはいかない。 (それよりもサンダウンめ、何をしておる……) シュウが死んだことにより、サンダウンはシュウを埋葬しているのだろうか。 思ったより帰還が遅い。 まさかカエルに一緒に殺されたかと、考えたところで躓いてゴロゴロと転ぶ。 そこに、追いついたカエルが一気に跳びあがり、天から串刺しにせんとバイアネットをマリアベルの心臓めがけて突き出す。 転がるマリアベルの眼に移ったのは、命絶つ無慈悲な断頭台のような、串刺しの一撃。 間一髪でマリアベルはそれを避け切り、使える左手で体を起こす。 マリアベルのいた空間を食いちぎるかのような一撃が、一瞬の後に過ぎ、路地裏の地面を埋め尽くす石畳の道を破壊する。 (変われば変わるものよな……) カエルの両生類の双眸を見ながら、マリアベルは思う。 人を殺すことを覚悟した、修羅の瞳だ。 マリアベルが知っていた頃とは何もかも違う。 接近するのを許さないように、マリアベルは風の刃たるレッドパワーを使う。 「エアスラッシュ!」 真一文字に圧縮された風の刃が、カエルの首を一刀両断せんと襲いかかる。 しかし、カエルはそれを避けることもなく迎え討ち、バイアネットで逆に切り裂く。 卓越した剣技でなければできない芸当に、マリアベルはこれならシュウも殺せたやもしれぬ、と唸る。 カエルはマリアベルが距離を離すことを良しとしない。 マリアベルが近接用の武器を持ってないからだ。 一旦離れた距離を詰め、カエルの斬撃がマリアベルに向けて放たれる。 いくつか斬撃をマリアベルはもらうも、牽制に撃ったレッドパワーが功を奏して距離が離れる。 マリアベルが逃走を再び開始し、カエルもそれを追う。 形勢は完全にカエル優位で進んでいる。 追うものと追われる側はどちらが有利かは説明するまでもないし、戦闘スタイルの相性もある。 マリアベルはその性質上、近接戦闘は得意ではない。 だが、それはマリアベルがカエルに実力で劣っていることを示唆する訳でもない。 緊急任務遂行部隊ARMSにおいて、前衛はアシュレーやブラッド、カノンを遊撃担当に据えて、ティム、リルカ、マリアベルは後方で援護担当になっている。 アシュレーやブラッドがいない以上、マリアベルはいつもは分担されていた役割を一人でやらねばならないのだ。 接近戦ができるカエルとは相性が悪すぎる。 また、近接用の武器を持たないことも大きな要因の一つ。 懐に入られれば、マリアベルは使える手札が大幅に減るのだ。 マリアベルが路地裏から大通りに出る。 気がつけば、着ぐるみの中は熱気が立ち込めており、それによってさらに疲労は加速する。 大通りでは身を隠す場所に困る。 屋上につながっている階段がある建物を見つけ、マリアベルはそれを昇る。 一瞬遅れてきたカエルがどこにいったと行ったのかと首を振るが、すぐに見つけた。 足を止めて、バイアネットを構えて狙撃しようとしたものの、すでにマリアベルは屋根の上へと登って隣の民家へと渡っている。 ここで逃がしては後々支障が出る。 カエルはこのまま逃がすまいと再び足を動かす。 ここは城下町の大通りで、民家も商店も連なって建っている場所だ。 建物と建物を繋ぐ距離は、マリアベルでも易々と渡れるほど近い。 「ふぅ、久しぶりの運動は堪える……。 それよりも、くるかッ!?」 自分の後ろをつけてくると思っていたマリアベルは、後方を確認するが、そこには誰もいない。 高い所に上がったおかげで、上りつつある朝日が目に入るだけ。 しかし、気配は確かにするのだ。 (まさか撒いたか?) いや、そんなはずはない。 撒けるほど足は速くないし、撒くとロザリーたちの方に行かれる可能性もある。 足を止めて、自分の登ってきた階段を見つめるが、やはり誰も来ない。 思わず足を止めて、カエルの姿を確認するまでそこに留まる。 やな雰囲気だった。 確かにいるはずなのに、いつまで経っても姿が見えない。 ビュウビュウと吹く風に不安を煽られ、焦れて動きたくなる。 しかし、マリアベルはある見落としをしている。 それは、カエルの人間的な言動に騙されていること。 カエルは元は人間だが、やはり今はカエルそのものであり、その脚力を活かして戦うこともできる。 つまり、マリアベルの見落としが何かというと、カエルが階段を使ってくるという思い込み。 カエルの狙いは―― 「ッ!?」 「もらった!」 文字通りバネのごとく飛んで、直接屋根に登ってくることだった。 正面からではなく、横からの奇襲。 マリアベルは完全に不意を打たれるが、せめてもの抵抗として、もう一度エアスラッシュを使う。 実体を持たない風の刃と、実体をもったバイアネットが激しくぶつかる! エアスラッシュの威力は弱く、1秒もしないうちに再び消えてしまうが、マリアベルはまた距離をとって逃走する。 次に渡った屋根は、屋根の中央に大きな十字架がある。 つまり、マリアベルが足をつけている建物の内部は、荘厳な雰囲気に包まれた教会なのだろう。 もっとも、そんなことはマリアベルにとってどうでもいいことで、早く逃走を図ろうとするが、ついにカエルのバイアネットが火を噴く。 選んだ弾は爆発するタイプ。 「しまッ!?」 自分の足もとが崩れ、重力のままに瓦礫と一緒に落下するマリアベル。 落ちた先にはちょうど良く毛布や衝撃を和らげる何かなど、あろうはずもなく。 マリアベルは腰を強かに打って、うめき声をあげた。 (うぅ……) 外傷が激しい体が軋んで、悲鳴を上げる。 さすがのマリアベルも、死を覚悟せざるをえない状況だ。 だが、まだ終わりを迎えることはマリアベルのプライドが許さない。 「ここは……」 見渡すと、そこはマリアベルが一時休んでいた宿屋とは違って、汚らしい空間だった。 壁から床から埃まみれで、信仰の廃れを感じさせる。 黒ずんだ壁の色が、もうここでは休日等にミサが行われてないことを示す。 参列者用の席は、最後に人が座ってから何年も経っているようだ。 楽廊にあるパイプオルガンはもう何年も調律が施されてないように見えて、きっと弾いてみたらひどい音がするのだろう。 その中で、それだけが綺麗に輝いていた。 剣の聖女アナスタシア・ルン・ヴァレリアを象ったステンドグラス。 ガーディアンブレード・アガートラームを抱え、佇むアナスタシア・ルン・ヴァレリア。 剣の大聖堂にあるものと全く同じステンドグラスがそこあった。 朝の光を透過光として教会の中まで照らし、光り輝くステンドグラスは一層美しく見える。 「ああ、そうよな……アナスタシア」 死ぬわけにはいかない。 その思いが強くマリアベルの中を満たす。 アナスタシアはマリアベルやファルガイアの人に、死んで欲しくないからこそ戦った。 生き返って、どこかにいるかもしれないアナスタシア・ルン・ヴァレリアと会うまでは死ねない。 もし、それがマリアベルの知るアナスタシア本人なら、話したいことがたくさんある。 「いい死に場所を選んだな……」 穴のあいた天井ではなく、入口の扉を開けてカエルが入ってくる。 老朽化した扉はギギィと重たい音をあげる。 マリアベルは立ち上がり、ステンドグラスを背にしてカエルと相対した。 「死に場所に教会とはな……」 偶然の巡り合わせにカエルは感慨深く呟く。 お前の死に場所にふさわしいと、そういう含みを持たせた言葉だ。 それを聞いたマリアベルは何を莫迦なことを、とカエルを嘲るように右腕を押さえながら低く笑った。 「お主、何か考え違いでもしておらぬか……?」 一歩、カエルが前に進む。 考え違いなどしていないことを示すためと、マリアベルの殺害を実行に動かすため。 今度はシュウと戦っていた時のように、ストレイボウのような邪魔も入らない。 「わらわは伝説のイモータル、ノーブルレッドが末裔よ」 逆光になってて、カエルからはマリアベルの表情を窺うのは難しい。 代わりに、カエルの目にマリアベルの背後にあるステンドグラスが目に入る。 信仰心がとりたてて厚くないカエルとて、額ずいて拝みたくなるような出来栄えだった。 もちろんそれを実際に実行に移したりはしないが。 「死など、わらわには無縁のもの……」 カエルの足がまた一歩進む。 もうカエルが一瞬で跳びかかれる距離だ。 言いたいことはそれで終わりか?とバイアネットを構えてカエルが聞く。 「故に――」 そこまで言いかけて、マリアベルの言葉が止まる。 何事かとカエルが問いただそうとするものの、すぐに異変に気が付く。 「ああ、やはり来おったか。 考えれば大人しくしている連中ではないしの……」 そう、何者かがここに接近している。 カエルとマリアベルが気配でそれに気が付く。 カエルが背後の入口付近の気配を探るが、そこには誰もいない。 後ろを見せた瞬間、マリアベルはレッドパワーの力を練り上げる。 「話の続きじゃったな。 故に――」 そう、不死のノーブルレッドにとって、教会など意味はない。 (背後じゃない……! となると――) カエルの脳裏に天井が可能性として浮かぶも、やはりそこからも来る気配はない。 「お主がここを選んだ? とんでもない。 この教会はわらわが――」 教会に用があるとしたら、目の前のカエルのような命に限りのある存在だけ。 (だとしたら――) もう一つだけある入口の存在にカエルが気が付く。 そう、来たのだ。 マリアベルが逃がそうとしていた存在が。 止まっていた歯車が動き出すように、膠着していた空間が大きく動き出す! 「お主のために選んだのじゃッ!!!」 (マリアベルの背後か――!!!) マリアベルが炎のレッドパワーを繰り出す。 放たれた猛火を避けながら、カエルがマリアベルの背後のステンドグラスに向かってショットウエポンを撃った。 マリアベルの背後、カエルでさえも一瞬見とれたステンドグラスが大きな音を立てて割れる。 教会の内外に降り注ぐ破片とともに、舞い降りてくる存在。 ステンドグラスに描かれた女性が、実体を伴って顕現したように見える。 しかし、そこにいたのは実体化した聖女などではなく―― 「マリアベル!」 「マリアベルさん!」 桃色の髪をした美しい女性と緑色の髪をした可愛らしい少女――ロザリーとニノが飛び降りてくる! ◆ ◆ ◆ 着地したニノとロザリーが、それぞれ持っていたクレストグラフでカエルを攻撃する。 無属性の攻撃魔法ゼーバーによる、攻撃性を持った魔力の塊そのものと、風の属性を持ったヴォルテックによる嵐が襲いかかる。 カエルは一時撤退を選択し、教会の外に出た。 「お主ら……グラスの破片がわらわに当たったらどうするつもりだったのじゃ……?」 「えっ? んーと、マリアベルは着ぐるみ着てるから多少は大丈夫かなって……」 「すみません。 入口から入って魔法を使っても、マリアベルさんに当たると思いましたから」 「ちなみにニノよ、今飛び降りてくるとき見えておったぞ」 「え? 何が?」 「ロザリーは上手く隠しておったが、お主は……」 「ああ、そんなこといいのっ。マリアベルになら見られても」 「わらわにそんな趣味はないわッ!」 「違うよ! 女の子同士だから気にしないって意味だよ!」 「マリアベルさん……私たちが飛び降りてくるときあの方に呪文を使っていたのに、よく見る余裕がありましたね……」 「…………………さぁ行くぞ、皆の者!」 「あっ誤魔化した! ひっどーい!」 幸い、ステンドグラスから距離が離れていたマリアベルに、特に被害はなく。 とんでもない場所から現れたニノとロザリーに、マリアベルも悪態をつくだけにとどめた。 マリアベルも感謝しているからだ。 「それよりもマリアベル、一人で行くなんて酷いよ」 「酷いもなにも、そういう手筈じゃったろうに……」 「ええ、でも私たちも戦います。 マリアベルさんだけ傷ついていい理由はありません」 マリアベルはそれをダメだとは言わない。 否定してもたぶん無駄だと悟っているからだ。 代わりに、付いてこいとばかりに教会の入り口に向かって歩き始めた。 しかし、怪我が災いして足取りは重い。 ロザリーとニノが付いてきたことを確認して、マリアベルはゼーバーと同じ無属性のレッドパワー、メガトンインパクトを使うべく、魔力の構成を始めた。 残った二人は何事かと思うが、それを聞くよりもはやく、放たれたメガトンインパクトが教会の入り口を派手に壊し、大きな穴ができる。 「入口付近で待ち伏せされてる可能性もあるからの」 用心に用心を重ねた上での行動と分かると、ニノもロザリーも感心する。 その行動は結果として無駄だったのだが、それを二人が馬鹿にすることはない。 カエルは三人が大きな穴の開いた教会の入口から出てくるのを、堂々と待っていた。 風が激しく吹き、マント、あるいは外套を羽織っている者はそれにつられて衣服がたなびく。 「カエルよ、聞こうか。 お主はなぜこのようなことを?」 「答える義務も義理も……ない」 一時とはいえ、友誼を結んだマリアベルの質問。 マリアベルの問いを、カエルは無慈悲に斬って捨てた。 一方、マリアベルはシュウが死んだという情報を伝えない。 ロザリーとニノにそれを言えば、先ほどの自分のように動揺するだろうから。 「女三人か……」 カエルは自嘲するように呟く まるでいたいけな女を襲う夜盗か何かのようだと思った。 しかし、夜盗でもなんでもいい。 ガルディアが復活させることができるのなら、天に唾吐くことさえやるし、大地に拳を突き立てることもするし、流れる川の水にさえ逆らってみせる。 三対一でもカエルは退くことを選択しなかった。 マリアベルが逃げていたのは、おそらくこの二人を引き離すためだと判断したから。 そんな二人にそこまでの戦力はないというのが、カエルの見解だった。 また、ニノとロザリーが、マリアベルと同じ術師タイプの戦闘スタイルだとも見破ったから。 「行くぞ……」 先手必勝。 カエルから三人に向かって飛びこむ。 狙いは手負いのマリアベルだ。 しかし、ニノとロザリーのゼーバーとヴォルテックに阻まれ、マリアベルの手前で足を止められる。 カエルが少し足を止める間に、三人は散開してそれぞれの放つべきクレスト、レッドパワーの準備をする。 ニノ、ロザリー、マリアベル。 この三人を同時に攻撃する手段は限られてくる。 ならば、その少ない手段で攻撃するしかない。 カエルが地を這う衝撃波、ショックスライダーを地面に放つ。 カエルを起点にして、衝撃波が前方に扇状に広がりながら地面を食らいつくし、それぞれ三人に襲いかかる。 「ゼーバー!」 「ヴォルテック!」 二人がそれぞれの手段で衝撃波を相殺する。 残る一人、マリアベルは詠唱が遅れているのか、純粋な回避行動でショックスライダーから逃れた。 しかし、これはカエルの計算通りの行動だ。 カエルの攻撃方法はバイアネットによる剣技と、ARMによる銃弾だけではない。 シュウとの戦いの時では見せることのなかった、カエルの手札が切られる。 「ウォータガ!」 それは何もないところから魔力によって水を召喚し、敵を押し流す魔法だ。 カエルのすぐ後ろに、大質量の水が生まれる。 これをマリアベル達にぶつければ、さすがにこの程度の水量で溺れさせることはできないだろうが、すでに魔法を放ったニノとロザリーにこれを防ぐ手段はない。 二人が慌てて呪文の詠唱が始まるが、時すでに遅し。 これでマリアベル以外に手傷を負わせることに成功する。 カエルは召喚した水をそのまま躊躇うことなく放った。 「考えることは一緒よの……」 しかし、そうは問屋が卸さないのがマリアベルだ。 「ニノ、ロザリー! 家の中か高い所かに隠れぃッ!」 ロザリーとニノが指示通りに、それぞれ身を隠す。 もはや眼前まで迫った水、いや、津波は火の魔法でも風の魔法でも防ぐ手段はない。 だが、同属性のレッドパワーなら! 「メイルシュトロームッ!」 マリアベルの背後にも、大質量の水が生まれる。 いや、水量はマリアベルの方が多い。 純粋な術師タイプと、あくまで補助的にしか攻撃呪文を使わない戦闘タイプの魔力の差がここで出る。 その激流で、眼前まで迫った津波を、もう一つのより巨大な津波が押し返す。 何の変哲もない城下町に、津波が襲いかかるというあり得ない事態が起きた。 街灯を、たまたま近くにあった民家を、水は容赦なく押し流す。 「すごい……」 水が引いた後、しばらくしてから、離れた民家に隠れていたロザリーが外に出て、濡れた地面を踏む。 ロザリーは驚嘆するほかない。 これだけの実力を操るマリアベルなら、ニノとロザリーが足手まといな理由もよく分かる。 カエルのいた場所に目をやるが、そこにカエルはない。 まさかこれで勝利したのか、とマリアベルに聞こうとしたところ、不意にロザリーを照らす日光が遮られた。 雲でも差し込んだのかと思うが、今日は雲ひとつない快晴だったと気づく。 不審に思って空を見上げたロザリーに、同じく民家から出てきたニノが悲鳴に近い声をあげる。 「ロザリーさん! 上っ!」 つまり、その答えは―― 「はあああああああっ!」 押し寄せる水から逃れるため、天高く空に飛び上っていたカエルの姿! カエルはそのままの勢いを保ったまま、ロザリーにバイアネットを持って降りかかる。 「ッ!? あうっ!」 ロザリーの回避が間に合わない。 大腿部を切り裂かれ、出血が激しく出るロザリー。 大腿部の傷は致命傷に繋がる。 そのままロザリーを殺さんとカエルは飛びかかるが、ロザリーに当てることさえ厭わない覚悟で撃ったニノのゼーバーで離れる。 このままでも、ロザリーの戦闘力は奪われたも同然。 そう思ったカエルはロザリーから離れ、今度はマリアベルに襲いかかる。 マリアベルのは着ぐるみごと壁にもたれかかれ、グッタリとしている。 ひょっとして水に押し流されて、気絶でもしたのかもしれない。 そう思って、カエルはそのまま心臓めがけてバイアネットを突き刺す。 マリアベルの心臓にあたる位置を、カエルは狙い過たず刺すことに成功した。 だが、聞こえてきたのは断末魔の叫びではなく―― 「正気かッ!?」 氷のレッドパワーを展開し、隠れていたマリアベルの声ッ! 今度はカエルが奇襲を受けた形となり、左肩の部分が急速に凍りつき、凍傷になる。 「どこの世界に、ボーッとしたまま敵の攻撃を受ける奴がいると思うかッ!」 そう、カエルが大質量の水同士による激突で、人の目から隠れるように天高く飛んだのと同様に、 マリアベルもまた着ぐるみを脱いで身軽になって、ついでに囮にも使用したのだ。 痛む肩を押さえ、カエルは少し距離をとる。 「日光は美容の敵なだけで、別段浴びても死ぬことはない……それにしても着ぐるみを着ての運動は疲れるものよ……」 熱の高まったマリアベルの体温を、朝の少し寒気の残る風が気持ちよく冷やしていく。 少しばかり身軽になったマリアベルが、今度は積極的に攻勢を仕掛けていく。 火、水、氷、風、無属性、マリアベルがこれまでにカエルとの戦いで見せた、レッドパワーの属性はこれで五つ。 元来、一つの属性の魔法しか使えないというのが常識だったカエルにとって、間違いなく脅威だった。 ここまで多種多様な魔法を扱える存在と言えば、圧倒的な魔力を持つ魔王くらいしか思いつかない。 しかし、相手を脅威に感じているのは何もカエルだけではない。 「ケアルガ!」 カエルの左肩の凍傷が跡形もなく癒えていく。 マリアベルも、攻め、守り、癒しを効率よく使う、ここまで戦闘力のバランスがいい存在は初めて見る。 「回復まで使えるか……」 剣技は一流。 状況に応じて、効果的な戦闘方法を選ぶセンス。 回復、攻撃両方の魔法をつかいこなす魔力。 明らかにマリアベルたちとは相性が悪い。 マリアベルもロザリーもニノも回復魔法は持ってないし、唯一の回復手段のエリクサーはロザリーとシュウに持たせてある。 そう、シュウがここにいない以上、一度きりしか使えない切り札の回復手段なのだ。 おいそれと使うわけにはいかない。 多少の怪我は回復できるカエルと違って、一瞬の判断の遅れが致命的な事態を招きかねないのだ。 それに、マリアベルの魔力とて無限に使えるわけではない。 今のマリアベル達に足りないのは前衛を務める人物。 シュウは見た目通り忍者だ。 忍ぶ者という名の通り、直接の戦闘はあまり好まない。 ……実際のところ、マリアベルの認識は忍者という言葉にとらわれた先入観でしかなく、シュウはどの距離の戦闘もできる万能タイプなのだが。 サンダウンも銃――マリアベルの知識に合わせればARM――を使った戦闘が得意だ。 後衛タイプばかりが偏ってて、今のパーティバランスは非常に悪い。 マリアベルは、早いところアシュレーやブラッドのような人間に会わんといかんな、と思った。 ふと、マリアベルはロザリーの身を案じる。 まだ多少は動けるようで、遠目にも立ちあがろうとしているのが見える。 しばらくはそれで我慢してもらうしかない。 ロザリーに向かわないように、マリアベルはカエルの注意をひきつけるために話をする。 「思えば、お主も愚かなことをしたものよッ!」 「ああ、愚かだと思う」 カエルも運よく話に付き合ってくれた。 マリアベルは攻撃をしながら、あるいは攻撃されながら、時々ニノの援護も混じりながら話を続ける。 「お主、自分が恥ずかしくないのか? あの魔王の言いなりになっておる自分を見てどう思う?」 「道化だとでも?」 マリアベルのレッドパワーをかわし、カエルがその隙をつこうとするが、ニノの援護がまた入る。 カエルは攻めあぐねていた。 ニノの持っていたクレストグラフの一つ、クイックがマリアベルの反射神経を高めていたから。 先ほどのように、思ったより攻撃が当たらない。 「分かり合えないというのは悲しいことだな……」 「知ったような口を……ッ」 すでに事態は最悪の方向へと向かってる。 時の引き金の名を冠する卵はもうない。 もう少しカエルが動くのが早ければ、運命は変わったかもしれない。 未来という名の幾筋にも分かれた道の中に、エイラが生きる道はあったかもしれない。 しかし、体が一つしかない以上、選べる道が一つしかない以上それは仮定「if」でしかありえない。 今カエルにとって大切なことは、あの時ああすればよかったかもしれないと後悔することより、起こってしまった物事に対する被害を防ぐ最短の道を走り抜けることだ。 「マリアベル、お前が悪い訳ではない。 他の誰かが悪い訳ではない。 これは、こうなることを防げなかった俺の罪だ」 カエルがどんなに身を粉にして説明を重ねたところで、マリアベルの協力は得られないだろうし、 協力があったとしても、エイラを生き返らせることはできないだろう。 だから、カエルは戦う。 理不尽なことだとも思う。 6500万年もの昔から今現在まで、世界とやらは確かに繋がっているのだ。 だが、それを説明されたところで、納得できる人間などそうはいない。 カエル自身も6500万年もの昔の人間が死んだことで、そのツケを払わされることになるなど思いもしなかった。 だが、ここで祖国がただ徒に消えるに任せるのは、あまりにも忍びない。 ガルディアの建国から600年。 繁栄を極める祖国はこれからも滅ぶことなく発展し続け、ついにはクロノたちの生まれる年代で、建国1000年を祝った祭りまで起きているのだ。 カエルにはこれからの400年の発展の歴史を、これまでの600年の歴史をなかったことにするなどできない。 サイラスが命をかけて守ろうとしたものを、失いたくなどない。 「お主、プライドはないのか……ッ!?」 「プライド……だと……?」 プライド、それは騎士にとっての矜持であると同時に、今のカエルにとって一番必要のないもの。 騎士であることを捨て、ただのグレンであるカエルにはもう縁がないものだ。 だから、カエルは言ってやった。 「プライドで空腹が満たされることはない!」 そして、駆ける。 マリアベルではなく、ニノを襲うために。 そう、今のカエルに必要なのはプライドではない。 「それと、同じことだ!」 プライドではガルディアを取り戻せない。 プライドが無ければ、小さな子供だって蟻のように殺すこともできる。 そう言わんばかりに、ニノに襲いかかる。 ニノがゼーバーを使って迎撃しようとするが、カエルはそれをヒラリとかわす。 そして、カエルはニノの手にあるクレストグラフを、口を開けてカエル特有の長い舌で弾き飛ばす。 これもカエルが初めてみせる芸当。 マリアベルがカエルの人間的な言動に囚われて奇襲を受けたのと同様に、ニノもまさか本当にカエルのような長い舌が伸びるとは思わず。 生理的な嫌悪感もあって、ニノは尻餅をついて後ろに倒れる。 カエルの見たところ、ニノとロザリーはこのクレストグラフを使って魔法を使っている。 だから、それを弾き飛ばせば、ニノは必然的に無力化される。 それは正解だ。 ニノの手にはクレストグラフがもうなく、このままカエルの攻撃を甘んじて受け入れるしかないはずだった。 しかし、ニノはここで自身に秘められた才能の一端を垣間見せる。 ニノは尻餅をついたままの姿勢で、右手を開いてカエルに突き出し、呪文の詠唱を始めたのだ。 そして、放たれる拳大の火球。 それはロザリーの世界にある、初歩中の初歩の呪文でもあった。 「メラ!」 「なにっ!?」 カエルは完全に不意をつかれた。 ◆ ◆ ◆ 話は少しさかのぼる。 マリアベルの各世界の魔法の講釈、そしてニノが導きの指輪を使ってみようとした間に起きた『ちょっとした出来事』を今ここに記そう。 「ねぇロザリーさん、あたしに呪文っていうのを教えてっ!」 「おいニノ、わらわの話を聞いておったか? クレストソーサレスと違って呪文の習得は一朝一夕ではできん。 媒介がないから、全ての手順を自分でやらねばならんのじゃ。 それはマリアベルが得意げになって、魔道に関する知識を語ったり、自らの操るレッドパワーの素晴らしさについて語っている時であった。 神妙な表情になって、教師の教えを忠実に聞くような生徒のごとき態度だったロザリーが、急に話を振られてキョトンとした顔に変わる。 「どうしたのニノちゃん?」 「あのね、あたしクレストグラフがないとただの足手まといになるから、呪文とか覚えられるなら覚えたいの」 ロザリーにもマリアベルにも分からない話でもない。 何らかの事情でクレストグラフが無くなった時、ロザリーとマリアベルにはまだそれぞれ身を守る術があるが、ニノにはないからだ。 もっとも、無理だとは思っていたロザリーも性格上、ハッキリとは言いにくく。 ここは、ニノのみんなの役に立ちたい、という心意気を買って教えることにした。 当然習得は無理だろうが、その後でロザリーが少し慰めてあげればいいこと。 そう思っていた。 しかし、ロザリーとマリアベルの予想を裏切り、ニノは幾度かの失敗を経て一番初歩の呪文を成功させた。 「で、できたっ……!」 かざした掌に浮かぶ拳大の火球を見て、ニノが大いに喜ぶ。 ロザリーとマリアベルは開いた口がふさがらない。 落ちこぼれの言葉を鵜呑みにしていた訳ではないが、ニノの卓越した魔道のセンスに驚かされる。 それは、ニノに眠っていた本来の才能と、母親に愛されたい一心で得た技術によるだった。 ソーニャはニノを才能のない子供だと早々に見限り、正規の魔道の教育をニノにしていなかった。 しかし、ニノは母親になんとかして認められようと、ソーニャの隣でソーニャの唱える魔道を見て必死に学習していた。 門前の小僧、習わぬ経を読むという言葉がある。 ニノは必死にソーニャの口を読み、正確な詠唱が聞き取れる技術を身につけた。 魔法の詠唱を正確に聞き取れる技術を持った人間など、何年修行してもできる人間はそうそういない。 エレブ大陸にも、それができるのは数えるほどしかないほどだ。 そして、ニノの出自もその才能の裏付けをしている。 ニノはリキアに存在する名門の魔道一家の子供なのだ。 まさに魔道の申し子。 ソーニャはニノを役立たずだと思っていたが、とんでもない。 ニノは大成すれば、ソーニャなど比べ物にならない才能を秘めているのだ。 その才能の一端が、今ここで花開き始めている。 そしてこれこそ、ロザリーとマリアベルがニノを落ちこぼれだと思わなくなった理由。 さすがに、ホイミなどの回復呪文の習得はできなかったが。 ニノはまだ才能があるとはいえ、一介の魔道士。 賢者でもない限り、ホイミは使えないだろう。 レッドパワーも根本的な種族の違い故か、一度も使うことはできなかった。 マリアベルが、レッドパワーまでそう易々使いこなされてたまるか、と少しだけ安堵し、 また、やはりレッドパワーはノーブルレッドのみが使える選ばれし技よな、と息巻いていたのをここに付け加えておく。 ◆ ◆ ◆ カエルが驚愕して、今の状況になるまで時間は数秒もかからなかった。 ニノの思わぬ反撃に足を止め、マリアベルの追撃が加わった時に勝負は決した。 ニノが拾いなおしたゼーバーのクレストグラフに魔力を十分に充填して、カエルの目の前に立っている。 バイアネットはいまだこの手に残っているが、それを何かしようという間にカエルはゼーバーによって重傷を負うか、さもなくば死ぬだろう。 終始優勢で進めていたカエルの意外な敗北。 ちょっとした油断で勝負は決まった。 カエルはよく戦った方だと言える。 シュウとの戦いを経て、大したインターバルも挟まずに、三対一でロザリーもニノもここまで傷つけたのだから。 しかし、相性の良さがあってもそこまでが限界だった。 「よくやったニノよ。 あとはわらわが……」 殺すにせよなんにせよ、さすがに、子供にこれから先のことを任せるのはつらい。 マリアベルが近寄って、カエルの武装を解除しようとする。 しかし、ニノは何を思ったのかカエルに話しかけていた。 「これで、考え直してくれるかな……?」 「何を……? ニノ、やめぃッ!」 マリアベルがニノを戒めようとする。 カエルは微動だにせずに、強い決意を以てニノに答えた。 「俺は……この傷に誓った。 必ず、ガルディアを取り戻してみせると……!」 「その傷、自分でつけたの?」 「……ああ」 「ニノ!」 「マリアベル、静かにしてて! あたしに任せてほしいの……」 ニノの強い口調にマリアベルも止まらざるを得ない。 正気か?というのがマリアベルの本音だ。 ロザリーもマリアベル自身も深く傷つけた相手であるし、また、これはマリアベルの誤解に過ぎないが、シュウも殺した人間なのだ。 心情的に、マリアベルがもうカエルを仲間と思う理由もない。 「だったら、まだ戻れるよ」 「何……」 「だって、傷をつけてるってことは迷ってるってことだよね?」 ニノはこう思っていた。 自傷行為を行ったのは自分の決意がまだそこまで盤石ではないため。 何故なら、それは非効率的な行為だからだ。 本当に決意したのなら、自身にとって不利になるような行為はしないはず。 決心が鈍る度に傷を見て自分を戒めないと、そういうことができないと判断したから。 「……だが、俺は……」 「誰かの手を掴むことは、弱さなんかじゃないよ!」 カエルの心に迷いが生じる。 そうなのだろうか? 自分一人で背負い込まず、誰かの手を借りてもいいのだろうか? この手を血で汚さずに、もう一度クロノたちと力を合わせるべきなのだろうか? 迷いを見せ始めたカエルに、自分の腕の傷が目に入る。 それで、カエルの心は決まった。 「……けるな」 「え?」 そう、耳を貸すのは他人の御託ではなく自分の声なのだ。 この先、誰の言葉にも耳を貸さぬよう、カエルは左腕の戒めの傷をつけたのだ。 「ふざ、けるな……」 カエルの目に再び火が灯る。 子供の声に惑わされるような安い決意でもない。 大喝するようなカエルの声が響く。 「俺は、ガルディアを取り戻さなくては『いけない』んだ!」 “英雄に『ならなくては』、ファルガイアを守ることができないのだッ!」” その声を聞いたとき、マリアベルの脳裏にアーヴィング・フォルド・ヴァレリアの言葉が甦る。 そして、カエルの言葉とピッタリ重なった。 「いかんッそやつッ! ニノ、離れるのじゃッ!」 マリアベルが止まっていた足を動かし、ニノを助けようとする。 あれは、ARMS指揮官、アーヴィング・フォルド・ヴァレリアの目と同じ。 目的のためなら、いくらでも他人を犠牲にし、利用できる目だ。 説得など、不可能な話だった。 カエルがバイアネットを使い、ニノの腹を串刺しにしようとした瞬間、マリアベルよりもはやく動いていた影があった。 ドシュッ! 「……え?」 ニノの呆けた様な声が響く。 ニノの目の前には、自分を庇って腹を貫かれたロザリーの姿があった。 尋常じゃない量の出血が、さらにニノの思考を真っ白に奪っていく。 充填していたゼーバーの魔力も霧散していく。 ロザリーの腹からバイアネットを引き抜いたカエルはさらに、ストレイボウと別れる時にした騎士の宣誓のような格好で、バイアネットを天に向かって突き立てる。 だが今度は意味合いが違う。 今度は騎士の宣誓ではなく、相手の命を奪うための純粋な行動だ。 バイアネットから轟音が響き、何かが射出される。 (これは……アシュレーのッ!) それはアシュレーが怪獣と戦っている時、相手の数が多いときによく使用していた技だ。 マリアベルが空を仰ぎ見ると、そこには文字通り、一切の比喩なしで、無数の弾丸があった。 回避が間に合わない。 もはやどうしようもないことを悟って、マリアベルは「絶望」を感じた。 マルチブラストによる弾丸の嵐が、断頭台のようにマリアベルに降り注ぐ。 ドドドドドドドドドドドドドドドドッッッ!!! 「……かはッ……」 弾丸に文字通り蜂の巣にされるマリアベルの姿。 そのまま受身を取ることもなく、地に伏した。 ドロリと流れるマリアベルとロザリーの血。 それを見ても、まだニノは動けなかった。 「――あれ?」 ニノがロザリーを見る。 動かない。 「――え?」 ニノがマリアベルを見る。 動かない。 間の抜けたような声を出すことしか、今のニノにはできない。 それはほんの少しまでは有り得なかった光景で、しかし自分がそうなる原因を作ってしまったことを自覚する。 よかれと思ってした行動が、最悪の結末を迎えていた。 やがて、ジワジワと理解し始める。 「あ、あた、し、が……」 カエルにはニノの気持ちも、震えるほどの声になっている理由も痛いほどよく分かる。 きっと自分を責めているのだろう。 カエルに情けをかけようとしていたりもしたし、そういう優しい子なのだと思った。 でも、同時に考えなしのお人よしだとも思った。 ニノのおかげで命を永らえたのだが、カエルはロザリーやマリアベルを殺したときと同じように、ニノを殺そうと動く。 「すまない……」 そう言って、バイアネットがニノを刺し殺すまさにその瞬間! ようやくサンダウン・キッドが到着して、カエルを突き飛ばしていた。 時系列順で読む BACK△066-2 永遠を背負いし者Next▼066-4 Justice ~それぞれの正義~ 投下順で読む BACK△066-2 永遠を背負いし者Next▼066-4 Justice ~それぞれの正義~ 066-2 永遠を背負いし者 シュウ 066-4 Justice ~それぞれの正義~ サンダウン マリアベル ニノ ロザリー カエル ストレイボウ ▲
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フルマー 艦上戦闘機 移動力 10 索敵範囲 3 燃料 50 索敵海中 1 生産資金 1900 搭載 可能 防御力 対空 30 対地 10 対艦 30 搭載武器 武器名称 対司 対空 対装 対非 対艦 対潜 射程 優先 1 2 3 4 7.7mm機関砲 3 50 10 40 0 0 1 8 8 4 - - 227kg爆弾 18 0 50 90 20 0 1 1 - 1 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 艦上戦闘機だが、日米のそれと比較しようもない能力。 戦闘機としては酷いとしかいいようがないが、爆弾積めるのはマアマア。 だがシーファイアになれず、ここで行き止まり。 そもそもこのゲームにフューリアスもアーク・ロイヤルも出ないし、キャンペーンで 軽空母も作れない。よって艦載機の意味は無い。 イギリス史実キャンペーンがあれば…無理? まだシーファイアのほうがマシだろう。 グラジュエーターより改良可能。
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サカツライソザキ(酒列磯前神) サカツライソサキの別名。
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マールカールの司祭 レヌス河は大河であり、多くの国々との境となっている。 その大河ゆえに、帝國にとって領土は一区切りとなり、中原にとっては帝國が兵力を押し渡すことが困難となる防壁でもあった。 西方辺境にとっても、レヌス河沿いの地域は気の抜けぬところであった。多くは集村を成し、しかも高台に作るのが常であった。集まり住まい、互いに守りあう。河のあちら側でも、こちら側でも互いに変わらない。河向こうからやってきた者らに備えているのだ。河向こうでも河のこちらでも行なっていることは変わらない。人の営みがあり、人の暮らしがある。 ただ神が違う。 ローサイス司祭はそっと息をついた。それは古代魔導帝國の昔から変わらず、そしてずっと横たわっている違いだった。教会は教える。世界は造物主により作られたと。それは今生きるこの世へのまなざしを高める。 人は知る。造物主が作ったこの世は、それゆえにもとから愛が満ちている。それは全てのものらに等しく降り注ぐ。この世のものとして高められたものは、その愛をよりよく知り、その愛ゆえの力をより多く表すことが出来る。そのように考える教会の信徒らにとって、この世にある神々も精霊も人も、全てが等しく造物主の子であった。人は己を高めることができ、それは開祖の「人の子」のように、神のごとくとしか思えぬ力を示すことも出来る。 だが、そのように思わぬものらもいる。この世には人などには思いもよらぬ高く大きな力をもつ神があると。その神は世をあるべく保つよう力を振るい、あるいは戦う。この空も、この大地も、吹く風も、振る雨も、かまどの炎も、すべてが神々の恩寵によって守られる。信徒はその世でこそあるべき生き方ができる。それが破れれば、魂さえ救われぬ世の終わりがやってくる。 ゆえに人は神を正しく崇め奉り、それを保たねばならない。正しき神と人とのつながりは正しき神へのかかわりより生まれる。それが為されるところが神殿であると。 神殿の神々は正しく崇め奉られねばならぬ。決して人などと並びはせぬ。 かくして河の境は神の境となった。河のこちら側は「帝國」であり、教会の国であった。あちらは中原であり、神殿のあがめる神々の国であった。 見やるレヌス河は、そんな人の思いも知らぬげに流れ続ける。夕日に赤く染められた流れは、まるで血のようだ。かつては本当に地に染められもした。 ローサイス司祭の勤めるこの教会もまた、教会として立てられたが祈りのためのみの場ではなかった。教会であり同時に村人の逃げ込むところであり、最後に拠って立ち戦うための場でもあった。いまは町と言ってよいところだが、丘の上に城壁とともにある。 そこはマールカールの早瀬として知られたところだ。 流れは速い。だが浅い。いまも夕日の中で白波がきらきらと輝いていた。浅いがゆえに川筋は動きやすく、民を苦しめた流れでもあった。 また早瀬は浅いがゆえに、軍勢の通過しやすいところでもあった。すなわちこここそが川向こうからの軍勢が渡り来るところだった。マールカールの町はもとはといえば砦であった。物見の塔と報せの狼煙台の置かれたところだ。兵隊相手の諸々の商売の場が村となり、やがて町となった。 教会が作られ、辺りの民の逃げ込むところともなった。兵隊相手の商売であるから、教会のありようも奇麗事ばかりでは済まない。本当の意味で、人々の助けにならねばならない。兵士なら傷つき、喧嘩もすれば刃物とて出す。女たちにもそれぞれの生き様や暮らしがある。 ローサイス司祭は、マールカールの砦町のようなところに来るには、若すぎるといわれていた。誰もに案じられながらも、案じられているのは司祭だけではなかった。司祭のありよう一つで、町や村に満ちる気は変わってしまう。けれど内戦がローサイスのような若者を助祭から司祭へと押し上げ、そして教区司祭を任されるようになった。若者で無ければならなかったとも今では思う。 何よりローサイス司祭はこの砦町が好きになっていた。西方人らしい朴訥で、言葉より成しごとを示すような不器用な生き方が好ましかった。町の人々もまたローサイス司祭の事を案じているようで、若いうちからこんな場末の町などにいたらいけない、もっと勉強のできるところに行けるよう、願い出てはどうかなどとまで言い出すくらいだった。 ローサイス司祭が困って、もっと皆さんのお役に立つような方のほうが、などとうかつに答えようものなら、いいやそんなことは仰らないでくれと必死に打ち消し、ここらの誰よりもすばらしい司祭様にいつまでもいて欲しい、などと初めとはさかしまのことも言ったりする。そのいずれもが、この町の人地との気持ちなのだと、ローサイス司祭は思い受け止めようと思っていた。 日々は必ずしも穏やかとは言えない。内戦は遠い南方や北方だけでなく、ローサイス司祭の属する教会をも当事者として行なわれていた。それは教会の中で合い争うということであり、ある教区と違う教区とで、狂句を後ろ盾にした激しい争いとなったところもあった。あるいは教区の諸侯領主が教区のものとともに定刻には向かうこともあった。 北方のいくさは激しく血みどろで、出征したものらは五体満足には帰れぬだろうなどといわれた。西方辺境候セルトリウス卿の王子らもことごとく倒れたとも聞いた。 もっとおおきなこともあった。西方辺境領から川向こうに出征した軍団が、大敗したことだ。また西方辺境候親政軍が川向こうの別の国を討伐したこともあった。川向こうでも様々なことが起きているという。 そのたびにマールカールの砦町も騒がしくなり、守備隊長は常備兵のみならず召集兵を集めたりもしていた。ほんの一月ほど前にも、川向こうのある国の王が、臣下に討たれたとかで大騒ぎになったことがあった。 聖職者であるローサイス司祭にできることなど無いも同じだ。長くこの砦町に住まうものらのほうが、出来事やその行く末にずっと詳しい。だからローサイス司祭にできることは、その砦町の住人たちの暮らしに寄り添ってゆくことだけだ。 今日もまた日々の勤めを終え、夜の最後の始末を終える。 明かりを携え教会堂を見回るが、まだ宵の口で、町はざわめいている。 それもまた町のありようなのだ。 教会堂の入り口を叩く音がする。ローサイス司祭はいつもの足取りで向かった。街が起きている間は、教会堂も寝入ってしまうわけには行かない。 やってくるのは恋に破れた少女かもしれないし、酒場の諍いを思わぬほど大きくしてしまった若い従卒かもしれない。その誰もが、ローサイス司祭には大事な信徒だ。 教会堂の大きな扉をそっと開く。その先にいるのは、守備兵の一人だ。 「どうされました?ノブ」 「あの、神父様、こちらの方々が、神父様のお知り合いだそうで、どうしてもお会いしたいから、案内してくれって」 さて、と思い、扉を開いて守備兵ノブの示すほうを見た。旅装の外套に身を包み、その頭巾を深くかぶって人相は窺えない。一人は小柄で、子供ではないかと思われた。だが身を包む外套はもう一人より上等に思えた。 もう一人は明らかに男だった。背はそれほど高くは無いが、がっちりした体つきに見えて、武人なのかもしれない。西方では珍しくない。二人のさらに背後には、二人を乗せてきたらしいそれぞれの馬がいる。 男は頭巾の縁をつまむようにすこし上げて、ローサイス司祭を見た。 「よろしいですか、司祭様」 「どちらさまでしょうか」 「仔細は中にて」 うろんだとは思った。だが、後ろ暗いことをしてきたのなら、わざわざ守兵から繋ぎをつけようなどとはしないはずだ。 「判りました。お入りください」 ここまで案内してきた守兵のノブに後は引き受けるからと言い含め、帰らせた。代わって教会堂に二人を招き入れる。中を歩く二人の足跡は濡れていた。 男が頭巾を引き上げ、振り返る。口元に笑みは浮かんでいるけれど、その瞳は笑っていない。ひややかといっていいほど静かなにローサイス司祭を見ている。 「カールマール教会のローサイス司祭であられますな」 「いかにも、わたくしがジュリアス・ローサイス教区司祭です」 ローサイス神父は笑みを返した。 「教会では神父とお呼びください」 男の眉がかすかに動く。顰める形になったのは一拍にも満たないわずかな間だった。そして男の目はやっと笑みの形になった。 「これは失礼、神父殿。いや、神父様、でしたか」 「ここより奥で伺うほうがよろしいでしょう。ゆっくり火に当たって、暖かいものを呑まれて一休みなさいませ。ここは神の家です。ここでならあなた方が害される恐れはありません」 「あなたを見込んで間違いは無かったようだ、ローサイス神父様。一つ折り入ってお願いがあるのです」 「それはわたしから言わねばなるまい」 ふいにもう一人がいった。ローサイス司祭の思ったとおり子供の声だった。すこし驚いたのは、それが女の子の声であったことだ。 その子は外套の頭巾を下ろし、真っ直ぐにローサイス司祭を見詰めた。教会堂の灯りの中でも、結ったその金髪と緑の瞳はきらきらと光って見えた。 「ローサイス神父、どうか力添えを願いたい。これはあなたにとって善悪の関わらぬことだ。だが、我らにとって命のかかった重いことなのだ」 貴人の口ぶりで言う少女を前に、ローサイス司祭はただ見つめ返すばかりだった。 とかなんとかw あ、もちろん、これは例によって例のごとく、無し上等でひとつ。
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autolink DG/S02-100 カード名:魔王アルマース カテゴリ:クライマックス 色:青 トリガー:2 【自】このカードが手札からクライマックス置場に置かれた時、あなたは1枚引き、自分のキャラ1枚を選び、そのターン中ソウルを+3。 ままま、魔王っ!? ぼぼぼぼボクがっ!? レアリティ:CC illust.原田たけひと ・対応キャラ カード名 レベル/コスト パワー/ソウル 色 勇者アルマース 1/0 4500/1 青
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ダイライヤ - deirheia 国土の多くを山に囲まれた、工業・採掘などの産業帝国 四つの国の北側にあたり、気候は厳しいですが潤沢な鉱物資源により、 富裕層も多く豊かな国です。 また古代の遺跡も数多くあり、失われた技術、科学の研究が盛んです。 ダイライヤ所属キャラ一覧 定住キャラ一覧 参照画像/PQ地図:合併版&案内(image_id=71860) 他の人が作った地図の一覧はこちら 地名 首都GrayBuild/グレイビルド/石造りの大型建造物が多いことから、グレイビルド(灰色の街)と呼ばれるようになった Evilaイヴィルア/人が住める北限にある、極寒の地。限度を超える寒さ、と言う意味もある ペロポネソス遺跡/(東にあるので)エウロス ,(オデッセイアの風の名前より)北>ボレアス、西>ゼピュロス 南>ノトス 東>エウロス アークイデア/(電子/聖柩、哲学/知恵) セレ/スペードからの航路の玄関街 スプロケットsprocket/他都市とのHub役割を期待されて付けられた名前だったが、寂れてしまい「スプロックト」とも呼ばれている エレイア湖/夏は涼しく、避暑地として人が集まる エリエ/入り江にあって、エレイアに近い キオスク/商人の街。昔は、宮殿および別荘地だったところから付いた名前 フォーラウト(レアメタル鉱山)/希少金属の産出場。※以下参照執事の地図 グリスレイ(失われた渓谷)/数々のロストテクノロジーが眠っている渓谷。危険。 ジャッキステイル(ゴールドラッシュ)/カジノと保養地を擁する一大観光都市。 グレトロード(負け犬街道)/↑のカジノで負債を負う者が辿る険しい街道。 ライナーバッハ(亡者の湿地)/↑の街道等で息絶えた魂が集まる湿地帯。底なし沼アリ。 レスティヴィチーノ / ぐら屋のある街 名所 古代都市・科学研究院(国会図書館) 幻視図書遺跡 企画PQ:ぐら屋/image_id=70235/tomo(MS_06FS) 宿・あばら屋 聖教大神殿→出典 国名(英語スペル)由来、および国章 ダイライヤ:deirheia deity(神) + rhei(流転する)。 PQ[ポタクエ]企画 レスNo.14 【機械虎】氏の記事から。 上記以外のスペル - diryea グラザード家執事、ヴァルサール・エーギャン製作の地図に記載されたもの。 出典:藤居(m_neko)氏画 「企画PQ:執事の地図」(image_id=70336)